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阿久澤菜々について


ここでは私なりに歪というユニットの紹介も兼ねようと思っていたのだが、気がつくと彼女たちのことをなにも書いていない。

役者個々について、それぞれの演技の癖などを書きながら紹介に替えてみよう。

まずは阿久澤菜々だ。

俳優講座で初めて彼女を見た時……とても怖かった。

私は気が小さいので、演出やワークショップをしている時など、役者の反応が異常に気になってしまう性格だ。

だから必死でふざけたりして場を盛り上げるのだが……彼女は無反応だった。きっと嫌われているのだと落ち込んだ。

役者をやっている人だったら、誰しも経験があると思うが、真面目にやっていて演出のいうこともちゃんと聞いてやっているのに、演出家がイライラして強い調子で言ってきたり、逆にあまりダメ出しをもらわなくなったりすることがある。

あれはほぼ演出家の怯えが原因なのだ。

ダメ出しして、役者から全く反応がないと、反発しているか、不満があるかどっちかだと解釈してしまい、落ち込んだりイライラしたりするのだ。役者は自分の演技について考え込んだりして、結果としてむすっとしているだけなのに、演出家の心の中では大変なことになっていたりする。

「ああ、きっと納得してくれてないんだ、ああああ」

話はそれるが、逆にダメ出しをもらうのがとてもうまい俳優がいたりする。

わからない時はわからない顔をし、時には質問を混ぜて確認してくれたりする人だ。こういう人には安心してダメだしができる。演出家も怯えることなく接することができるのだ。

で、阿久澤菜々だ。

そうなのだ。

彼女が無反応だったのは、私以上に緊張していて、こわばっていただけなのだ。

しかしそれを私が理解できたのは随分と後のことだ。

そういう意味ではあまりダメ出しを引き出すのが上手な役者ではないのかも知れない。

芝居はとても上手だと思う。

問題があるとしたら……上に書いたことに加えて、その器用さだ。

彼女はとにかく言われたことを理解しようとする。

そしてそれを実行しようとする。

さらには言われたことは基本的にこなせてしまう。

もちろん、これは悪いことではない。

ただ、深い部分での理解まで届かない可能性はあるかもしれない。

演出は上辺の細かいことをダメだしするが、本当は何を目指しているか、その世界観を理解して欲しいだけなのだ。たとえすぐに結果が出なくても、それさえ共有できれば、大丈夫なんだと思う。

けれど、あっくん(私はこう呼んでいる)は、理解しようとしてそれを実行してしまうあまり、ともすれば細かい点ばかりに目が行ってしまう可能性がある。

それがわかってから、私は彼女にはなるべく細かいことを言わないように心がけている。

さらには彼女の無表情にも私もビビらなくなった。

昨年に続き、やらせてもらえたことで彼女のそうした面がわかってきた。

で、実際、今回の方がいい。

あまり紹介にならなかったな。

とにかく可憐でキュートな女優さんだ。

彼女の特性もわかってきたことだし、本番までに、その魅力をもっと表に出したいね。


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